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   Essay by Yoshiaki Ando

                                              安東 能明・作
     黄金のトライアングル

 食べてすぐ動くのは体に悪い。誰もが知っている常識である。親が死んでも食休み、ということわざ通り、一日三食いただいた直後は、なるべく体を使わず、血液が胃袋に集まり、消化をしやすいように、じっとしているのが健康の秘訣である。消化もされないうちから、あわてて、動き回れば、胃に負担がかかり、胃潰瘍の元にもなる。しかし、現実はなかなか、うまくはいかない。特に朝だ。

 とにかく、朝は忙しい。寝起きでぼけた頭をしゃんとさせるべく、テレビ画面の左上に刻々と示される時計を気にしながら、ご飯をかきこむ。パンをかじる。新聞に目を通し、一息つく間もなく歯ブラシを口に突っ込む。着替えもそこそこ、通勤通学の人になる。あまりにあわただしいから、朝食は抜いた方が健康に良い、という説もあるくらいだ。

 私の朝食は、時折パンも食べるが、大半はご飯と味噌汁で済ませている。おかずがあれば言うことはないが、細君は子供たちの弁当作りに忙しく、納豆や大根おろしというメニューが多くなる。

 ここで大事なのは、味噌汁である。中でも、具が命と思う。鍋のふたを開けて、白菜だけがしんなりと浮かんでいるような朝は、やっぱり食欲が湧かない。昆布が入っていれば、出汁も効いているはずだが、量が多すぎるとかえって、これもマイナスになる。

 私にとって無難な具の最たるものは、タマネギだろうか。ほんのりした甘味が良い。そこに豆腐が交じっていれば、食欲はぐっと増す。この二品が入った味噌汁に出くわした朝は、どことなく幸福な気分にひたれる。さらに、そこに、あれが……と期待に胸を膨らませる。油揚げである。

 タマネギ、豆腐、油揚げ。一つずつを見れば、どうということもない食材だ。けれども、これがトリオで揃った朝は、もう感動ものになる。おかずなしで、軽くご飯は二膳いける。ただ、この黄金トリオが揃う日は、年に一度あるかないか、だ。前に揃ったのはいつ頃だったろう。思い出せない。



                                                     (了)