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Essay by Yoshiaki Ando![]()
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2001年新潟日報に掲載しました
安東 能明・作
幻の蟹
新潟には、サラリーマンをしていた頃に訪れたことがある。上司のお伴で二泊三日ほどの旅だった。行く先々で暖かいもてなしを受け、中でも万代橋から眺めた信濃川の滔々たる流れは今でも忘れられない。 出張の前から、上司はいささか興奮気味だった。新潟には、若い頃、彼の大の親友だったA氏が住んでいた。その親友との再会を楽しみにしていたのである。出張のひと月近く前から電話して、会う約束を交わしたのは無論のこと、出張が近づくにつれ、さて、土産には、何を持っていこうか、ということになった。ちなみに、わたしは当時も今も浜松に住んでいる。浜松といえば、当然、浜名湖である。ウナギやスッポンで有名だが、いかにも芸がない。何しろ、上司とA氏は超のつく親友である。考えた末、出てきた案は、国内でも浜名湖でしか獲れない幻の蟹「ドウマン」だった。 「ノコギリガザミ」という少し怖ろしげな学名のついているとおり、性どう猛、黒っぽい丸みをおびた甲羅に覆われて、こぶのついた前爪は巨大で鋭い。挟まれれば、人の指などひとたまりもない。ところが、その肉たるや、甘味のあるベタインやアミノ酸が多く含まれ、脂肪分が少ないために、淡泊ながら独特のうま味があり、まさに絶品なのだ。彼は地元でも入手困難なこの蟹を、地元の漁師にたのみこみ、新潟の宿泊先のホテルあて、期日指定で生きたまま送って貰うように手配した。「ドウマン」は生命力が強く箱に入ったままでも一週間近く生きていられるのだ。 出張二日目の夜になった。約束をした居酒屋に出向くべく、ホテルマンに夕刻届いているはずの蟹を上司は所望した。出てきたパッケージを見て、彼は呆然となった。凍っていたのである。ホテル側が気を利かせて冷蔵庫に入れてしまったのだ。もちろん、蟹は息絶えていた。ホテルマンを怒鳴りつけた上司の顔は、まさに茹で上がった蟹そのものだった。 ドウマンについて
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